ジャルキャヒマール遠征を終えての総括

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ジャルキャヒマール遠征を終えての総括

プライベート

夏シーズンも始まり、ガイド業も佳境を迎えつつあり日本の夏山を楽しんでおります。遠征から少し時間が経ってしまったが、3ヶ月前の今日5/9にジャルキャヒマールに向けてのサミットプッシュを行ったということもあり、今一度昨春行ったジャルキャヒマール遠征を振り返りたいと思う。

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「ついにジャルキャにトレースが付きましたね」

ジャルキャヒマールからの下山後、野村が自分たちが登ったジャルキャヒマールにくっきりと刻まれたトレースを振り返って言った。

我々メンバーはそのトレースを見て改めて登頂の喜びを嚙みしめた。

今回の遠征でジャルキャヒマール/6473mとギャラ/6451mの2座の未踏峰を登頂することが出来た。ジャルキャヒマールは私と野村にとっては3年越し2回目の挑戦、隊長の竹中にとっては6年越し3度目の挑戦でようやくその頂を踏むことが出来た山となった。

そして、今回は同じエリアに位置する同じくギャラというもう1つの未踏峰も登ることが出来た。

そう、今回の遠征では自分たちの足で2座の未踏峰に登頂することが出来た。

このメンバー3人の足によって人類初めての頂を2つも踏むことが出来たのだ。

結果としては「成功」である。2座も登れたから「大成功」かもしれない。

登山内容としては3回のローテーションでジャルキャヒマールに登頂することが出来ている。

1回目は4/20-22の2泊3日でいきなり6000mにタッチすることが出来た。2回目は4/25-28の3泊4日でギャラの登頂に成功すると共に6000mに2泊することが出来、順応にも成功することが出来た。そして5/9-13の4泊5日の3回目のローテーションで5/11の12時5分にジャルキャヒマールに登頂することが出来た。

これだけ見れば順調であり、無駄なく各ローテーションでやりたいことを達成することが出来て登頂まで効率的に「最短距離」を進むことが出来ているように思うし、実際に事実そうではある。

が、現場の実情としては振り返ると一筋縄ではなかったと感じることも多々あるのも事実である。

まず、登山期間であるBC(ベースキャンプ)滞在期間として、今回4/18-5/15という28日間の滞在で、これまで今回含めて3回のネパール遠征を行っているが、その中でも一番長い滞在期間となった。※因みに3年前は21日間のBC期間。

BCの標高は4550mであり、いくら順応しているとは言えまずそこに滞在する日数が長ければ長いほど身体は消耗する。また日数が長ければ集中力の持続も難しい。

結局今回のサミットプッシュもこのローテーションで登れないと終了というタイミングで登頂することが出来ている。もしもまだまだ日数の余裕があったら登山への集中力が低下していたかもしれない

また、天気には大いに悩まされた。2回目のローテーションと3回目のローテーションの間が10日間空いているがずっと雪予報であったくすることが出来なった。その間、本当に登れるのか、、と不安になったりもした。精神的に焦りも募るレスト期間だった。

朝起きて一面真っ白なBCを見るたびに気が滅入っていたのを今でも覚えている。

このレスト期間が長かったことから、BC期間があと少しでも短ければ今回は日程的に登頂には至っていない可能性が大きい。その意味でも今回の28日間のBC期間は正解であった。

また、降雪に伴う氷河上でのラッセル、ヒドゥンクレバスの観察、雪崩への注意など体力的にもメンタル的にも登山中も集中力と根気を試された。

もしも降雪が降りラッセルを強いられることになった場合のギアとしてSnowplackという軽量版スノーシューのようなギアを準備していたが、その作戦が功を奏しラッセルをよりスムーズに行うことが出来た。

そして、行程としては当初はC2/6000mまでしか作ることを想定していなかったが、2回のローテーションを経て、ジャルキャヒマールまでの距離がまだまだ遠いということが判明し、C3/6300mまで作ることにした。その結果C2に2泊C3に2泊という6000m以上に4泊というかなり体力的に消耗する内容になってしまった。

この時も、もしもC3を作ることになったとき用に準備しておいたのが、アライテントのライズ2という自立型シェルターであった。C2から先はテントも軽量化してサミットを目指すという考えのもとで用いた作戦だったがこれも正解だったと思う。2人用シェルターの中で男3人で2泊するというのは文字通り苦しかったが、このお陰で登頂が近づいたのも間違いない。

このように、結果だけ見ると順調に行ったように見えるがいろいろと大変なことは随所にあり、振り返ると日程的にも雪のコンディション的にもギリギリであったとおもう。Snowplackにしてもライズ2にしても難しい状況になった場合のことを想定して準備をしていたからこそ現場で使うことが出来、それが登頂に繋がったと改めて感じる。

BC生活中でも登山中でもその時その時でメンバー同士で話しをしてその時の最適解を行動に移してやれることを出し切った山行だったと思う。

長くなったがまとめると今回の成功の要因として4つ挙げられると思う。

それは、「時間をかけて山とじっくり向き合ったこと」、「下準備」、「各メンバーが適材適所で持ち味を活かせたこと」、「メンバー同士の良好な関係」である。

「時間をかけて山とじっくり向き合ったこと」については、C3まで出して身体的には消耗するがそれを厭わずに高い標高帯に滞在してじっくりと、かつ着実にジャルキャヒマールとの距離を縮めることが出来たということである。これは3年前の反省からきている作戦であり、前回はC1からワンプッシュで山頂を目指したが敗退している。そのことからジリジリと標高を上げてキャンプを設置して着実に迫っていくしかないという考えがメンバー間の総意であった。そして今回はその作戦を実践してしっかりと形にすることが出来た。日数はかかるし身体ぼ負担も大きいが時間をかけてじっくりと山と向き合えて良かった。

「下準備」とは、山とじっくり向き合うという作戦を実行するために上記で述べたライズ2と、降雪後のラッセルを見越してSnowplackを準備していたことである。その他にも細かい下準備はいろいろとあるが大きいところで言うとライズ2とSnowplackの装備面での準備が大きい。山を見くびらずに厳しい事態を見越して準備しており、それをしっかりと現場で活用できたことも間違いなく勝因の1つである。

「各メンバーが適材適所で持ち味を活かせたこと」に関しては、竹中は隊長として出国前の準備/下調べを誰よりも率先して行ってくれた。例えば日本山岳会の助成金申請についてなど多数の事務作業などだ。また、BC期間中のローテーション計画も多数の案を考えてくれた。BC期間が28日間あったがこれも竹中のアイデアが大きい。もしも少しでも短ければ今回は登れていなかった可能性が高いので本当に28日間で良かった。そして現場では要所要所で冷静な判断をしてくれたし、また氷河に初めて乗った際は他の2人よりも体重が軽いことから先頭を歩いてラッセルを買って出てくれた。他にも現地での会計担当も引き受けてくれ、お金のことは安心して任せることが出来た。野村はその歩荷力を活かして常にどのメンバーよりも重い荷物を背負ってくれた。目印用にピンクテープを付けた竹竿20本やFIXロープなどはずっと野村が背負ってくれていた。またホワイトアウトナビゲーション能力を活かし最後のローテーション1日目のC2入りする際には先頭に立ってチームを引っ張ってくれた。ラッセルでも力を発揮してくれた登頂後のジャルキャヒマール東峰の登り返しでも本当に心強かった。私はC1上のFIXロープを張る箇所や、前回撤退したポイントの核心箇所の1つであるトラバースポイントでは率先して先頭を行かせてもらった。

このように各自がそれぞれの持ち味を活かすことが出来た。そして皆がそれに納得しながら登ることが出来た登山だったと思う。

最後の「メンバー同士の良好な関係」であるが、これは文字通りメンバー同士の関係が良かったということである。言いたいときに言いたいことを言える関係であったと思う。例えば休憩したいときに休憩したいと言えること、体調が悪い時に体調が悪いと言えること、作戦を変えた方が良いと思った時にそれを言えること、である。文字にすると当たり前のことであるが、遠征中の現場では言いたいときに言いたいことを相手に伝えることはなかなか難しかったりする。そしてそれが言えない関係であればそれが積もっていきストレスになり遠征の結果にも影響することもある。

この「メンバー同士の良好な関係」こそがもしかしたら1番大きな勝因だったかもしれない。そして今回のチームの1番の持ち味/武器であったかもしれない。

余談だが、メンバー全員が1歳児を子供に持つ父という共通項があり、10日間のレスト期間中もお互いの家族や子供の話をしたり、また、暇な時は各自の本も回し読みをしたりした。メンバー全員が同じ本を共有しているというのも結束に繋がったかもしれない。

(因みに私は紙の本で、竹中、野村はKindleであった。Kindleを貸し続けてくれて有難うございました。)

最後に、今回の遠征は成功したが、何度も言うように内容を振り返るとすんなりと登れたわけではない。

メンバーの体調/メンタル、ベースキャンプの滞在期間の長さ、天気、雪のコンディション、ギアの準備、そして良いチームワーク、これらのどれかが欠けても登頂には至らなかったと思う。

体力面や技術面といった自分たちの能力だけではなく、上記の全てがうまく当てはまったことによりジャルキャヒマールという未踏峰に迎えてもらうことが出来た登山であった。

一緒に登ってくれた竹中、野村に改めて感謝をしたい。

竹中の6年越しの想いを実らすことが出来た登頂、そして野村にとっての海外登山での初めての登頂、この2つの意味を持つ登頂に立ち会えたことを本当に嬉しく思う。

勝因①:山と向き合ったからこそ遂にジャルキャを真正面に捉えることが出来た。
勝因①:じっくり山と対峙しながらロープを出しつつ進む。
勝因①:C2/6000mから見たマナスル。この標高までキャンプを上げたからこそ見られた景色。
勝因②:ラッセル時に重宝したSnow plack。
勝因②:C3で活躍したアライテントのライズ2。
勝因③:C1上部のFIXロープ。左はスノーバー、右はスクリューで取って固定分散。
勝因③:C3への帰着を目指す野村のラッセル。ホワイトアウトが迫ってきても心強い。
勝因④:アライテントの2人用シェルター(ライズ2)にて3人で泊まる。
勝因④:酔い潰れてるところをメンバーにいじられている杉本。
ジャルキャヒマールからBCに下山した時の写真。お気に入りの1枚です。

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